フェーン現象とは?原理をわかりやすく図解

 

フェーン現象は日本で度々見られる現象であり、学校でも何度か習う内容です。

しかしどういう現象なのかはなんとなくわかっていても、どういう原理なのかよくわかっていない人も多いのではないでしょうか?

今回、フェーン現象の詳細や原理などを詳しく解説していきます。

フェーン現象とは?

フェーン現象とは、「山に向かって風が吹いた時、風下側の気温が上がる現象」です。

標高は高くなればなるほど気温は下がるものですが、風上側と風下側では標高あたりの気温低下の割合が異なります。風上側では100mあたり0.5℃ほど、風下側では100mあたり1℃ほど。

つまり山の標高が高ければ高いほど、風上と風下の気温差が大きくなります。

日本には山脈が多数あるため、台風や海からの規模が大きい風が吹く度にフェーン現象が見られるのです。

フェーン現象が原因で5月、6月といった時期に30℃を超える気温が観測されることもあります。

またフェーン現象が見られる時、風下側は気温が上がるというだけでなく乾いた強い風が吹くということも要注意です。

空気が山脈を越えると水分がなくなり乾燥した風になるため、温かい乾いた風が風下側に吹き付けることになります。火災が起きやすく、消火しにくい環境になるのです。

フェーン現象の原理とは?

フェーン現象は特に原理を理解せずに「そういう現象」だと思っている人は多いでしょう。

しかしそこまで難しい原理ではないのでこの際フェーン現象のメカニズムについて理解しておくといいでしょう。

「フェーン現象でなぜ風上側と風下側で温度が違うのか?」

「なぜ風上側では標高100mあたり気温が0.5℃変化するのに対し、風下側では1℃も変化するのか?」

この問いの鍵は空気に含まれる“水蒸気”にあります。

風上側は空気が湿っており雲が発生。これに対して風下側では空気が乾燥しています。簡単に説明するなら、雲の発生が風上側のみで見られ、これにより風上側で気温低下が緩和されることが気温差を生じているのです。

もう少し詳しく原理を説明していきます。

順序に沿って4つのメカニズムについて理解しましょう。

  1. 標高が高くなると気温が下がる
  2. 気温が下がると飽和水蒸気量が少なくなり水蒸気が水滴に変わる
  3. 凝縮熱が加わり気温低下が緩和される
  4. 風下側では凝縮熱は発生しないので高度による気温変化のみ

1.標高が高くなると気温が下がる

まず風に関係なく、標高が高いところでは気温は低くなるものです。

これにはいろんな要因があるのですが、「太陽によって温められた地表から遠ざかること」、そして「気圧が下がること」などが主に挙げられます。

2.気温が下がると飽和水蒸気量が少なくなり水蒸気が水滴に変わる

気温が下がると空気に含まれる水蒸気は水滴へと凝縮されます。これは空気が含むことができる水分量、“飽和水蒸気量”が少なくなるためです。

気温20℃において17.3gの水分の許容量があった空気は、気温が10℃になると9.4gか水分を含むことができません。

気温が低くなると空気が取り込める水分量は少なくなるのです。

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コップの表面に水滴がついたり、眼鏡が曇ったり、冬になると結露ができたりするのはこれが関係します。

水蒸気を含む大気が上昇して気温が下がり水分が飽和すると、水滴となり雲が発生します。

3.凝縮熱が加わり気温低下が緩和される

水蒸気が水滴になると大気に熱を放出します。この熱が標高による気温低下を緩和するのです。

これは気化熱の逆ですね。気化熱とは、水が水蒸気になる際に大気の熱を奪うことを指します。たとえば汗をかいたままにしておくと体が冷えたり、雨が降った次の日に気温が下がったりする現象です。

これら気化熱とは違い凝縮熱は身近に体感できる現象はあまりないので、気化熱の逆と考えましょう。

風上側では空気が斜面を登り高度とともに気温は下がりますが、雲が発生する過程で凝縮熱により気温の低下が少なくなるのです。

4.風下側では凝縮熱は発生しないので高度による気温変化のみ

続いて風下側について考えてみましょう。

風上側では『気温低下⇒水滴(雲)発生⇒凝縮熱により熱を放出』という現象が起こっていました。

しかし風下側では空気が斜面を下るだけなので、気温が低下することもなく凝縮による熱の放出はありません。あるのは高度による温度変化だけです。

山頂の空気は風下側の地表付近では気圧の上昇などにより気温は上昇しますが、それを緩和する凝縮熱は発生しないのです。

これがフェーン現象の原理です。

日本ではいつフェーン現象が見られるのか?

日本では季節によらず強い風が吹くことがあり、フェーン現象がよく見られます。

特に以下は日本における代表的な風の種類です。

  • 春一番(2月~3月)
  • メイストーム(4月後半~5月)
  • 台風(8月~9月)
  • 木枯らし(10月中旬~冬季)

南から風が吹いた時は日本海側で気温上昇、北から風が吹いた時は太平洋側で気温上昇が見られます。

強い風が吹いた時などにこれを意識して天気予報を見てみるとフェーン現象が実感できるでしょう。

ちなみに春一番や木枯らしなどについてもその原理などを解説しているので、ぜひご覧ください。

春一番の意味や由来とは?時期と風速により定義されていた!

木枯らしの意味とは?木枯らし1号の条件(時期・風速)について解説