「彼はカップ麺をそのまま食べる破天荒な人物だ」
『破天荒』という言葉はこのように、人の行動・性格を「豪快」「大胆」と形容する際に使われることが多いです。
しかし実は、本来『破天荒』にそんな意味はなく、明らかな誤用とされています。
文化庁の調査により64.2%の日本人がこのような誤解をしていたため、この誤用はかなり浸透していると言っていいでしょう。
さて、今回は『破天荒』の正しい意味や使い方について詳しく解説していきます。
目次
『破天荒』の概要
- 誤用:豪快で大胆な様子
- 例文:「大雨の中、傘もささずに外出するのは破天荒だ」
- 正しい意味:今まで人がなし得なかったことを初めて行うこと
- 例文:「彼の発明はこれまでの科学史をひっくり返す破天荒な偉業だ」
- 類語:前人未到、前代未聞、未曾有
『破天荒』の正しい意味について
『破天荒』の由来
破天荒は中国の故事に由来します。
『天荒』とは「未開の地」や「雑草が生い茂るような荒地」を指す言葉。
官吏登用試験の“科挙”が導入されて以来、荊州から100年以上合格者が出なかったことが『天荒』と例えられました。そしてやっと劉蛻(りゅうぜい)という人物が科挙に合格すると「天荒を破った」と人々が称賛しました。
ここから『破天荒』という言葉が来ています。
破天荒の正しい使い方・例文
つづいて破天荒の使い方について例文で紹介します。
- 「この学校から東大に受かるのは破天荒なことだ」
- 「あの選手のマラソンのタイムは破天荒な記録だった」
- 「彼の研究はこれまでのものとは全く異なる破天荒な試みだ」
- 「彼女はこれまでいろんな世界記録を塗り替えてきた破天荒な選手だ」
『破天荒』はポジティブな意味合いでのみ使われる
『破天荒』は以下のようにネガティブな使い方でも意味は通じそうですが、普通は使われません。
- 「こんな被害を出した犯罪は破天荒だ」
- 「この学校設立以来はじめての退学者となる彼は破天荒な生徒だ」
主に偉業を称える際に使われるポジティブな意味合いの言葉です。
『破天荒』が誤用される理由
現在は『破天荒』というと「豪快」という意味の方が浸透しており、本来の意味で使うと逆に違和感を覚える人が多いです。
なぜ誤用の方の意味が浸透してしまったのか?
理由は3つ考えられます。
漢字の印象
「天荒(未開の地)を破る」という由来を知ると本来の意味合いがしっくりくるものです。
しかし「破」「荒」という漢字の印象からはどうしても「豪快」や「大胆」といったイメージを想起させるもの。
誤用の方の意味で使っていても違和感を覚えにくいのです。
本来の意味で使う機会があまりない
『破天荒』というのはちょっとした偉業や成果を残したとしても使われません。今まで誰もなし得なかったことをしてようやく使われるのです。
そう考えると頻繁に使う言葉ではないというのが分かるかと思います。
それよりは「豪快」といった意味合いの方が使う機会も多く、よく目にするため記憶に残りやすいのでしょう。
『破天荒』に限らず、『確信犯』や『敷居が高い』など本来の意味では使う機会が限られる言葉というのは誤用されやすい傾向にあります。
代わりの言葉がある
『破天荒』の代わりに『前人未到』や『前代未聞』などの言葉があり、より人々に浸透しています。漢字からも意味が伝わりやく使いやすい言葉です。
そのためわざわざ誤解を与えやすい『破天荒』を本来の意味で使う必要もありません。そうやって本来の意味で使わなくなり、間違った意味がどんどん浸透してったのだと考えられます。
使わなくなった言葉は間違った意味が広がってしまいますが、それでも相手に誤解を与えないためには破天荒ではなく「前代未聞」の方を使うのがよいでしょう。