「庶民にとって、セレブ御用達のお店は敷居が高い」
『敷居が高い』という言葉はこのように「レベルが合っていないため入りにくい」というような意味合いで使われることが多いです。
しかしそれは本来の意味合いとは違うというのはご存知でしょうか?
今回は『敷居が高い』という言葉の本来の意味や使い方など詳しく解説していきます。
目次
『敷居が高い』の概要
- 誤用とされている意味1:高級すぎたり上品すぎたりして、入りにくい
- 例文:「貧乏暮らしの自分にとって、宝石店は敷居が高い」
- 誤用とされている意味2:困難、ハードルが高い
- 例文:「この本は専門用語が多すぎて自分には敷居が高い」
- 本来の意味:不義理・面目ないことが合って、その人の家へ行きにくい
- 例文;「去年壺を割ってしまってから、祖父の家は敷居が高いと感じるようになった」
- 備考:現在ではほとんどの人が誤用とされてきた意味で使っており、特に最初の項目については広辞苑にも掲載されたため誤用とは言えなくなった
『敷居が高い』の本来の意味について
敷居が高いとは本来「不義理なこと・面目ないことがあって、その人の家へ行きにくい」ということ。
不義理なこと・面目ないこととは、
- お世話になったのにしばらく顔を見せていない
- 恩があるのにお礼を言っていない
- お金を借りて返していない
- 迷惑をかけてしまった
などのことを指します。
つまり、相手に負い目を感じることがあり、その人の元を訪ねづらいということです。
『敷居が高い』の語源
ここでいう“敷居”とは、家の内外を隔てる横木のこと。また家の中に入ることを『敷居をまたぐ』とも言います。
相手への負い目のため相手の家へと訪ねにくい(=敷居をまたぎづらい)というところから、『敷居が高い』という言葉は来ています。
本来の意味での『敷居が高い』の使い方・例文
『敷居が高い』の例文としては以下の通り。
- 「恩師には手紙を書かなくなってから、会いに行くのは敷居が高く感じるようになった」
- 「お金をずっと借りていたのを思い出したけど、いまさら会うのは敷居が高い」
- 「心無い言葉で傷つけてしまった彼の元を訪ねるのは敷居が高い」
誤用とされる方の『敷居が高い』について
つづいて現在よく使われている方の『敷居が高い』について解説していきます。
新たに広辞苑に掲載された意味
2017年12月出版の広辞苑第七版にて『敷居が高い』の意味に「高級だったり格が高かったり思えて、その家・お店に入りにくい」が追加されました。
これは今まで誤用だとされてきた使い方です。
- 「小遣いが少ない身としては、回らないお寿司屋さんは敷居が高い」
- 「学生にはドレスコードが要求されるレストランは敷居が高いだろう」
このような使い方でも間違いではなくなりました。
「困難」は掲載されていない
一方で、ただ単に「困難」「ハードルが高い」という意味で『敷居が高い』が使われることもありますが、これに関しては広辞苑には掲載されていません。
- 「専門用語が多い本は中学生が読むには敷居が高い」
- 「英語が苦手な自分が一人で海外に行くのは敷居が高く感じる」
- 「女の私が一人で焼肉に行くのは敷居が高い」
- 「店員の目が気になるから一人カラオケは敷居が高い」
これらの使い方をしていたら間違いであると指摘されかねません。
「値段や格が高い」こと、そしてそれによって「お店や家に入りにくい」ということ、これら2つの意味があって『敷居が高い』という言葉が使われるのです。
ただ現在では「困難」という意味で使っている人も多いため、実際は気にする人のほうが少ないでしょう。また新たに広辞苑に加えられるかもしれません。
それでも正しい日本語を心がけるなら、「困難」「難しい」「ハードルが高い」などの言葉で言い換えるのをおすすめします。