「委員会のメンバーが恣意的に選ばれた疑いがある」
このように『恣意的』という言葉はニュースなどで見かける機会はありますが、日常的に頻繁に使われるわけではないので正しい意味を知らない人も多いと思います。
文脈からマイナスのニュアンスがあり『意図的』や『作為的』などの意味合いで捉えている人も多いのではないでしょうか。
今回は『恣意的』の正しい意味や使い方について解説していきます。
『恣意的』の概要
- 意味:気ままで自分勝手なさま。論理的な必然性がなく思うままにふるまうさま。
- 使い方:マスコミにより事件が恣意的に報道される
- 対義語:一貫的、規則的、機械的
『恣意的』の語源
『恣』は『恣意的』以外で使われるのは稀ですが、訓読みすると「ほしいまま」となります。『意』は「こころ」や「おもい」です。
つまり恣意的とは「ほしいままのこころ」=「勝手気まま」となるのです。
一定の規則に従うのではなく、人の意が基となって自由に行動したり解釈したりすることを指します。
そのため『一貫的』や『規則的』『機械的』などの対義語となります。
『恣意的』の使い方・例文
恣意的の使い方の例は以下の通り。
- 「それぞれの図形に対して恣意的に記号を振り分ける」
- 「本の内容が恣意的に要約される」
- 「事件が恣意的に報道される」
- 「恣意的なルール変更が発覚して波紋を呼んだ」
- 「クラス替えが恣意的に行われている気がする」
『恣意的』と『意図的』の違い
『恣意的』を『意図的』や『作為的』と同じような意味合いで捉えている人は多いでしょう。
しかし「恣意的は偶然的・ランダムという意味合いを含むので意図的は誤りだ」と主張する人がいます。
たとえば「ポーカーで勝つために恣意的にトランプを配る」という使い方の場合。
- 勝利という目的があり、それに沿って最適な手順に沿ってトランプを配ると考えると恣意的は誤用で正しくは意図的
- 「恣意的にトランプを配る」という場合、トランプは交互に配らずに2枚、1枚、2枚といったように不規則に配り、それは勝つ意図に沿ったものではないことを指す
こういった主張です。
しかし勝つ目的があったとしても「規則に従わずに勝手気ままに」トランプを配ったという意味では『恣意的』でも正しいと言えます。
『恣意的』には「1.偶然的」と「2.意図的」、両方の意味があると考えるのが自然です。
つまり「恣意的にトランプが配られた」という場合、配った人に何かしらの意図があったかどうかは関係ありません。自然ではない不規則な配られ方がされればそれは恣意的と言えます。
「恣意的な報道」という例の場合、客観性のあるものではなく偏った報道を指します。そこに何かしらの意図がある場合でも(意図的な報道)、特に意図はなくただ単に好き勝手に行われる場合でも変わりません。
『恣意的』は『意図的』よりも広い意味で使われる言葉なのです。
これは人それぞれの解釈によって異なるので難しい問題ではありますが、少なくとも『意図的』という意味あいで『恣意的』と使ってもそれを一方的に誤用と決めつけるべきではありません。