「プリンにはでっかく名前が書いてあったから気付かないはずがない。だからそれを食べた彼は“確信犯”だ」
世間一般では、このように意図的に犯行を行った人のことを確信犯と言いますが、本来これは間違った使い方であることをご存じでしょうか?
今回は本来の確信犯の意味や使い方をご紹介し、誤用の方を使うべきか否かについて言及していきます。
確信犯の概要
- 本来の意味: 自分の良心に基づき、正当な行いだと信じて行う犯行
- 例文:「彼は以前、傘はみんなで共有し合えば誰も困らないし、使われる人も嬉しいはずだって真顔で言ってたからね。だから今回ボクの傘を盗んだのは確信犯だろうね」
- 誤用:トラブルを引き起こすというのが分かっていながら、良心に反して行う犯行(もしくは犯行を行う人)
- 例文:「デザートに名前を書いていたのに食べられるなんて。名前は大きく書いていたから、犯人は確信犯に違いない」
- 元々は法律学等で使用する専門用語であったが、現在日常会話で使う場合は後者の意味も正しいという風潮にある
簡単に説明すると、
犯行を行った人物がどういった意図で行ったのかが重要です。
その行いの正当性を確信し、義務感や使命感によって行った場合、
法律学上その犯行は“確信犯”と言われます。
一方、
正当性はなく誰かが不利益を被ったり社会に悪影響をもたらすと分かっていながら行う場合、
法律学上その犯行は“故意犯”と言われますが、通俗的に“確信犯”と言われます。
特に現在は、意図せず不注意で起こしたトラブルなどを過失と言うのに対し、
意図的に誰かが困ると分かって起こしたトラブル、またはそのトラブルを起こした人物を指し“確信犯”と言います。
過失犯・故意犯・確信犯の違い
よく混同される「過失犯」「故意犯」「確信犯」ですが、
これらの違いを具体例をもって説明します。
たとえば他人の傘を勝手に持ち帰った場合、
どういった経緯で持ち帰ったかでこれらが変わってきます。
- 他人の傘を自分の傘と間違えて、悪意なくそれを持ち帰る⇒過失犯
- 他人の傘だと分かっていて、悪いと思いながらそれを持ち帰る⇒故意犯
- ボロボロな傘なら盗まれた人は新しい綺麗な傘を買うきっかけになるから、その人のために良かれと思ってボロボロの傘を持ち帰る⇒確信犯
誤用とされる方も世俗的には正しい
「確信犯」というのは法律学上では専門用語のため、
司法に関する場ではこのような誤用は認められません。
しかし、本来の意味では日常の中で使う場面はほとんどありませんし、
誤用の方を正しい意味だと信じ多くの人が使っているのが現状です。
なので、現在は通俗的には誤用の方が正式な意味として認識されている風潮にあります。
実際、国語辞典には本来の意味に加えて、誤用の方も記載されていますし、
言葉は世間の認知度によって徐々に変容していくものです。
ただ、このような誤用をどれくらい許容するかというのは人によって違うものです。
たとえば、
「何気なく」を「何気に」と言う。
「的を射る」を「的を得る」と言う。
既存(きそん)を“きぞん”と言う。
これらは本来誤りとされてきましたが、
現在では容認されてきています。
しかし、人によってはこれらの言葉に違和感を感じるものもあるのではないでしょうか。
人それぞれ言葉に関する認識は異なるものなので、
柔軟に考えるのが大事なのです。