「芸人の体を張ったボケはお茶の間を引かせてしまい、失笑を買っただけだった」
このようにあきれて笑いを失うという意味合いで『失笑』という言葉は使われることが多いです。過去の文化庁の調査では60%もの人がこのような意味だと認識しているとのこと。
しかし実際には上記は明らかな誤用です。
今回は『失笑』の正しい意味や使い方について解説していきます。
『失笑』の概要
- 誤用:笑いも出ないくらいあきれること
- 例文:「その芸人の下ネタに失笑して言葉も出ない」
- 正しい意味:(笑うべきではない場面で)こらえきれず笑ってしまうこと
- 例文:「本気で怒られている時に、昨日のことを思い出して失笑してしまう」
- 備考:笑うべきではない状況で自分もしくは相手の過ちが原因で笑ってしまうことを指すので、何かを批判する文脈でしか使われない
『失笑』の本当の意味
『失笑』の正しい解説
『失笑』のよくある間違いは「笑いを失う」⇒「呆れる」というニュアンスでの誤用です。
そうではなく「過失の笑い」、「間違いの笑い」という意味で用いる言葉なので、結局笑わないのではなく笑うのです。
『嘲笑』は「笑うべきではない場面で笑ってしまうこと」、そして「他人の言動を嘲笑うこと」を指します。他人の言動を笑うのは失礼にあたるため、後者も前者の「笑うべきではない場面で笑う」という範疇に含まれます。
また「不謹慎な発言に失笑する」というような例文はよく見かけますが、これは状況によって正しかった誤りだったりします。
不謹慎な発言に対して見下して笑ったのであればこれは正しいですが、笑わずに真顔で呆れたのであれば誤用です。
ネガティブの意味でのみ使われる
『失笑』は「こらえきれず笑ってしまうこと」という意味ですが、「面白さをこらえきれずに吹き出す」という意味合いで認識している人も多いので注意が必要です。
- 「唐突に発せられたギャグに失笑してしまう」
- 「あのコンビの漫才は切れがありみんなの失笑を買っている」
このような使い方は間違い。
『失笑』は「本来するべきではない笑い」です。笑うことに対する批判、もしくは笑われるような原因を作った人に対する批判や自虐的な意味合いがあります。
『失笑』の使い方・例文
『失笑』の使い方を例文で紹介します。
- 「いけないとは思いつつ、先生の初歩的な間違いに失笑してしまった」
- 「厳格な雰囲気の中、失笑して声を上げてしまう」
- 「彼の転び方がおかしくて失笑してしまった」
- 「不適切な発言で失笑を買った」
『失笑』を使うシチュエーションとしては、誤用である「呆れる」と似ていますが意味は明確に異なります。
特に「呆れる」という場合は呆れられる対象に原因があり、その文脈では対象を批判的に述べるのが中心となりますが、失笑の場合は失笑をする側に批判的なニュアンスをもたせる場合にも使います。