『役不足』は日常生活においていろんな場面で使える便利な言葉です。
しかしこの言葉は誤用が多い日本語としても有名なため、間違えて使って恥をかいたという人も多いのではないでしょうか。
今回は『役不足』の正しい意味や使い方などを解説していきます。
目次
『役不足』の概要
- 正しい意味:力量に対して役目が不相応に軽いこと
- 例文:「監督の指示はエースにとって簡単すぎて役不足だった」
- 誤用:役目に対して力量が足りていないこと
- 例文:「そんな重要な仕事、若輩者の自分では役不足です」
- 類語:朝飯前、楽勝
- 対義語:力不足
『役不足』は『力不足』と間違って使う人が多い
「そんな大任、私では○不足です」
○の中に入るのは何でしょうか?
「重要な役割」に対して「私の力量」が足りていないという意味なので、役不足ではなく『力不足』が正解です。
ただ上記のような力不足というところを、逆の意味の『役不足』と誤用している人が多いのが現状です。
有名なのは人気漫画スラムダンクでの一説。
スラムダンクでの『役不足』の誤用
スラムダンク13巻110話。
怪我をした赤城に変わって試合に途中出場した桜木花道。赤城の穴を埋めようと奮闘する桜木に対し流川はこう言います。
1ページ丸々と使った大ゴマでデカデカと流川がかっこよく言い放つのが印象的です。
しかし実際には「赤城の穴を埋めるという役割」に対して「桜木の力量」が足りていないということなので、『力不足』が正解です。
役不足の正しい使い方
『役不足』を正しく使うには、「役割」と「力量」どちらが足りていないのかを考えましょう。
下の図をイメージすると理解しやすいと思います。
- 役が軽い=役不足
- 力量が足りない=力不足
ということです。
あとはシチュエーションで考えてみましょう。
『役不足』を使うシチュエーション
役不足を使う場面というのは主に以下の2つ。
- 人物を上げる
- 役割を軽んじる
「君のような優秀な人間にとっては“役不足”な仕事だとは思うが」
というように人を立てたり、
「ベテラン俳優がこんな役を演じるのは“役不足”だ」
というように役割が軽いものであることを主張したりする場合に使います。
「役割<力量」という関係を頭に入れて置くといいでしょう。
『力不足』を使うシチュエーション
力不足は役不足とは真逆の意味なので、使うシチュエーションもほぼ正反対です。
- 人物を下げる
- 謙遜する
- 役割を重んじる
「今度の簡単な仕事でさえ彼では“力不足”だろう」
というように人物を軽視したり、
「この度の重大な任務、私なんかでは“力不足”な面もあると思いますが、精一杯がんばります」
というように謙遜したり、
「チームのエースでさえ“力不足”となるような大任を自分が任された」
役割の重さを主張したりするのに使われます。
いずれにしろ、「力量<役割」という関係のときに使うのを頭に入れておきましょう。
あとがき
以上、役不足の意味や使い方についてでした。
言葉は人々の認識で変化するものなので、今まで誤用とされてきた使い方が正しいと認められることがあります。
たとえば、『確信犯』や『姑息』、『敷居が高い』などの言葉は日常生活の中で本来の意味とは違った使い方が主流となっていますが、現在では許容されて広辞苑にきちんと掲載されています。
- 確信犯
- よく使われる方の意味:悪いと思いつつ意図的に行う犯行
- 本来の意味;自分の良心に基づき正当な行いだと信じて行う犯行
- 姑息
- よく使われる方の意味:ひきょうなさま
- 本来の意味;その場しのぎ
- 敷居が高い
- よく使われる方の意味:高級すぎたり、上品すぎたりして、入りにくい
- 本来の意味;不義理などをしてしまい、行きにくい
ただしこれらのように許容される誤用というのは本来の意味よりも汎用性が高く、さらに代替できる言葉が少ない場合が多いです。しかし役不足は本来の意味でも使われる機会はよくありますし、誤用の方はきちんと「力不足」という代替の言葉もあります。
そのため役不足の誤用は許容されにくいと言えるでしょう。
あえて誤用の意味で使うという場面も想像しにくいですし、これに関しては正しい使い方をするのをおすすめします。