「あのお店は〇〇なクレーム対応しかしない」
「あのお店のクレーム対応は〇〇だ」
これらの文章の〇〇には『なおざり』と『おざなり』どちらを入れるのが適当でしょうか?
考えているうちにゲシュタルト崩壊してしまいそうですが、これらは日常会話で使うには中々難易度の高い言葉ですね。
今回、これらの言葉を日常会話で使いこなせるようになるために、詳しく解説していきます。
目次
「なおざり」と「おざなり」の意味・違い
- なおざり:いい加減にしたまま、何もしない
- 例文:「あのお店はクレームもまともに聞かない、対応はなおざりだった」
- おざなり:いい加減に済ませてしまう
- 例文:「あのお店はクレームを受けてもほとんど変わらない、おざなりな対応だった」
どちらも物事のいい加減な様子を表す言葉ですが、
「なおざり」は物事に取り組みさえもしないのに対し、
「おざなり」は一応は取り組むという違いがあります。
いい加減さの度合いで言えば、
『なおざり>おざなり』ですね。
そしてこれらを区別する際に見分ける一番簡単なポイントは、
名詞の前につけることができるのが「おざなり」だけということです。
「なおざりな〇〇」「なおざりに〇〇をする」という言葉は、
文法上は正しいのですが、意味としてはおかしくなるのです。
このことは例文を見てもらえば分かるかと思います。
例文
1.「彼は挨拶を〇〇にする」
〇〇の中には「なおざり」も「おざなり」も入れることができますが、
以下のように意味が違ってきます。
- なおざり:挨拶自体しない
- おざなり:挨拶はするが「ちーっす」のようにいい加減な挨拶
ただし、「おざなりな挨拶をする」の方が意味が通じやすいですね。
2.「彼はいつも〇〇な掃除の仕方しかしない」
〇〇の中には「おざなり」しか入れることはできません。
- なおざり:掃除自体をしないのであれば、「なおざりな掃除」というのはおかしく、正しくは「掃除をなおざりにする」
- おざなり:「いい加減な掃除」という意味
3.「彼女は〇〇にご飯を作った」
〇〇の中には「おざなり」しか入れることはできません。
- なおざり:ご飯を作らないのであれば「なおざりなご飯」というのはおかしいく、正しくは「ご飯をなおざりにした」
- おざなり:「いい加減にご飯を作った」という意味
名詞の前に来るのは「おざなり」だけ
「なおざり」や「おざなり」は形容動詞なので、
『〇〇な(名詞)』や『〇〇に(名詞)をする』という使い方は文法上間違いではありません。
しかし、「なおざりな挨拶」や「なおざりにご飯を作る」といったように、
文章にすると明らかに意味がおかしくなります。
なので、基本的に名詞の前に来る場合は「おざなり」しかありません。
ただ、「なおざりにした問題」や「なおざりにできない議論」というような文章もあるので、
注意をしましょう。
語源
続いて、それぞれの語源を知って理解を深めていきましょう。
「なおざり」と「おざなり」は語感や意味が似ているので、
語源に共通のものがあると考える人は多いのですが、
じつはこれらは全く関連性のない言葉だったのです。
なおざり
なおざりは10世紀には使われていたと見られており、
いくつか語源がありますがそのなかの一つをご紹介します。
なおさりは『猶去り』と感じに変換できます。
「猶」とは、「今も“なお”」というように以前の状態が続いている様子。
「去り」は距離を遠ざけること。
つまり、「状態を変えずに距離を置く」=「何もせずに放っておく」=「いい加減にしたまま、何もしない 」と言った感じです。
「猶去り」という言葉から、“何もしない”というニュアンスが読み取れると思うので、
おざなりと見分ける際に役立つのではないでしょうか。
おざなり
おざなりはなおざりよりも新しい言葉で、19世紀には使われていたとされています。
おざなりを漢字にすると「御座形」となります。
「形(なり)」は、『形(なり)の良い宝石』『裕福な形(なり)をしている』など、
現在でも使いますね。
そして「御座形」とは、『御座(敷)の形』という意味で、
宴会の御座敷で形だけは取り繕った様を指します。
『御座敷の形』のように表面上だけのいい加減な言動、
これを「おざなり」と言うようになったのです。
これも「御座形」という漢字に変換できれば、
なおざりとは別のニュアンスが読み取れるので、区別しやすいのではないでしょうか。
あとがき
以上、「おざなり」と「なおざり」の意味の違いについてでした。
非常にややこしい言葉なのですが、
それぞれの意味や語源をしっかり理解すれば意外と区別はつくものです。
日常生活で使うのには難易度の高い言葉でしたが、
きちんと使い分ければかっこいいですよね。
ぜひこれを機にマスターして、日頃から使っていきましょう。
それでは最後まで読んでいただきありがとうございました。