インフルエンザに感染したとわかった時に、まず一番に重要になるのが早く薬を服用することです。
この処置が遅れれば遅れるほどウイルスが増殖していき、症状が重くなったり、完治までの時間がかかったりしてしまいます。
そこで今回は病院で処方してもらえるインフルエンザの治療薬の効果や種類の違いについて詳しくまとめていきます。
目次
インフルエンザの治療薬は主に4種類
現在日本で使われているインフルエンザの治療薬は主に4種類あります。
- タミフル(オセルタミビルリン酸塩)
- リレンザ(ザナミビル水和物)
- イナビル(ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)
- ラピアクタ(ペラミビル水和物)
これらの違いとしては、
「服用方法」「服用回数」「服用年齢」「服用の際の注意点」などが挙げられます。
これらを表にまとめると以下の通り。
比較項目 | タミフル | リレンザ | イナビル | ラピアクタ |
---|---|---|---|---|
服用方法 | 経口(カプセル・粉末) | 吸入 | 吸入 | 点滴 |
服用年齢 | 0歳~9歳、20歳~ | 5歳~ | 5歳~ | 0歳~ |
服用回数 | 2回/日×5日間 | 2回/日×5日間 | 1回のみ | 1回のみ |
注意が必要な人 | ・10代は基本的には用いない ・腎臓が悪いと副作用が出やすい | ・呼吸器に病気のある人 ・乳製品にアレルギーがある人 | ・呼吸器に病気のある人 ・乳製品にアレルギーがある人 | ・妊娠中、授乳期の人 ・腎臓が悪いと副作用が出やすい |
以上の違いを除けば、服用の効果などに大きな違いはありません。
では具体的にインフルエンザの治療薬の効果について見ていきましょう。
インフルエンザ治療薬の共通の特徴
インフルエンザの治療薬4種に共通する効果・特徴として、
以下の2つを挙げることができます。
特徴1.ウイルスの増殖を防ぐ
勘違いされがちですが、
インフルエンザの治療薬の中にウイルスを撃退する効果があるものはありません。
種類によらず、ウイルスの増殖を防ぐために服用する薬です。
インフルエンザは感染した後、
体内で徐々にウイルスの数が増え、数日の潜伏期間を経て症状があらわれます。
症状があらわれてから約48時間後にウイルスの数がピークになるのですが、
その前に薬を服用してウイルスの数を抑えることで『症状の悪化を防ぐ』『解熱・完治までの期間を早める』などの効果が見込めるのです。
なので症状があらわれてから早期、
少なくとも48時間以内には服用するべきとされています。
特徴2.インフルエンザA型・B型ともに効果がある
毎年冬に流行するインフルエンザはA型とB型がありますが、
いずれの治療薬でも両方の型に対して効果を発揮します。
2009年-2010年に世界的に流行した新型インフルエンザ(H1N1)に対しても、
いずれの治療薬も効果が認められています。
ただし、いずれの治療薬もインフルエンザC型には効果がありません。
とはいっても、C型は重篤な症状になることはほとんどありませんし、
冬に大流行するということもなくそこまで脅威にならないので、このことが問題になることは無いでしょう。
インフルエンザウイルスの種類についてはこちらをご覧ください。
⇒インフルエンザの種類(A型・B型・C型)と症状や特徴の違い
各インフルエンザ治療薬の詳細
ではそれぞれの治療薬の詳細について説明します。
1.タミフル
- カプセル剤と小児用の粉末(ドライシロップ)の形状がある
- 1歳未満の赤ちゃんでも服用可能
- 妊娠中・授乳期でも服用可能
- 原則として10歳~19歳の患者は使用を差し控える(他の治療薬が使えない、重症化の危険がある場合などは問題ない)
- 因果関係は不明だが、かつて10代患者がタミフル服用後に異常行動による事故が数件報告されたため(詳細:厚生労働省:10歳代のタミフル服用後の転落・飛び降り事例に関する副作用報告について)
- 腎臓病を持っていると副作用が出やすいのであらかじめ意思に伝える必要がある
- 1日2回を5日間と継続的に服用する必要がある
- 副作用は胃腸症状(吐き気、嘔吐、腹痛、下痢など)が主
- 重い副作用はめったにない
- 感染予防の目的で服用が可能
タミフルは服用しやすく他の治療薬よりも幅広い人が使えるため、
治療薬の中で最も一般的と言えます。
タミフルは呼吸器系が弱い患者や
吸入器が使えないほど小さな子ども・赤ちゃんでも服用できるというのが大きなメリット。
ただし、特別な理由がない限り10代の服用ができないということや、
腎臓の機能が弱い人は副作用が強まるという点は注意が必要です。
腎臓の働きが弱いと薬の排泄に時間がかかり血中濃度が上昇して副作用のリスクが高まるため、
服用量・服用間隔を配慮しないといけません。
また、未成年の場合は異常行動の危険性を鑑みて、
服用中は一人にならないようにしましょう。
2.リレンザ
- 粉末状の薬剤を吸入器を用いて口から吸う
- 経口摂取とは違い、全身への影響・副作用は少ない
- 妊娠中・授乳期でも服用可能
- うまく吸入できない子供や小児では服用できない
- 1日2回を5日間と継続的に服用する必要がある
- 乳製品アレルギーを持っているとアレルギー症状が発現する可能性がある
- 副作用はめったにない
- 感染予防の目的で服用が可能
リレンザは吸入器を用いて服用するので、
経口摂取のタミフルとはその点においてメリット・デメリットが生じます。
赤ちゃんや小さな子供、呼吸器系が弱い患者は服用できませんが、
タミフルが使えない10代の未成年でも問題なく服用でき、経口摂取よりも副作用のリスクは少ないです。
ただし、リレンザには乳蛋白が含まれているため、
乳製品のアレルギーを持っている場合、アナフィラキシーなどのアレルギー症状があらわれる可能性があるので注意が必要です。
3.イナビル
- 粉末状の薬剤を吸入器を用いて口から吸う
- 経口摂取とは違い、全身への影響・副作用は少ない
- 妊娠中・授乳期でも服用可能
- うまく吸入できない子供や小児では服用できない
- 1回の服用で終了する
- 乳製品アレルギーを持っているとアレルギー症状が発現する可能性がある
- 副作用はめったにない
- 感染予防の目的で服用が可能
イナビルはリレンザと比べると効果や注意点などはほとんど同じです。
1回の服用で終了するという点がリレンザとは異なり、
このため現在はイナビルの方が主流となっています。
ただし、その分確実に服用をしないといけないというのがデメリットとなります。
うまく吸入できていなかった場合は効果が発揮されないので、
そういう恐れがある場合はリレンザの方が安心です。
4.ラピアクタ
- 点滴を用いて静脈から投与する
- 妊娠中・授乳期は医師への申告が必要
- 1歳未満の赤ちゃんでも服用可能
- 腎臓病を持っていると副作用が出やすいのであらかじめ意思に伝える必要がある
- 1回の投与で終了する
- 他の治療薬と比べると若干値段が高い
- 他の治療薬と比べると副作用の発生頻度が高い
- 重い副作用はめったにない
- 感染予防の目的での投与は不可能
ラピアクタは年齢の制限はなく1回の投与で終了するというメリットがある一方、
値段が他よりも高くなることや副作用の発生する確率が高いこと、予防目的で投与できないことがデメリットとして挙げられます。
副作用は重大な症状はめったに現れませんが、
下痢や臨床検査値の異常変動など軽い症状は他の薬よりも発生頻度が高いのです。
他の3つの治療薬の内、副作用発生頻度が高いタミフルでも、
カプセルで2.1%、ドライシロップで5.7%の発生報告ですが、
ラピアクタは成人が24.7%、小児が29.1%にもなります。
また、他の治療薬はいずれも感染予防として効果が認められていますが、
ラピアクタには感染予防の効果は認められていません。
治療薬の服用による異常行動について
タミフルを服用することによる異常行動で死者が出て、
これが報道されてタミフルの副作用に異常行動があると思われるようになりました。
これがきっかけで現在タミフルは10歳以上の未成年は原則服用できなくなりました。
ちなみに、異常行動の具体例は以下の通り。
- 突然立ち上がって、部屋から出ようとする
- 興奮状態となり、手を広げて部屋を駆け回り、意味のわからないことを言う
- 興奮して窓を開けて、ベランダに出ようとする
- 自宅から出て外を歩いていて、話しかけても反応しない
- 人に襲われる感覚を覚え、外に飛び出す
- 変なことを言い出し、泣きながら部屋の中を動き回る
- 突然笑い出し、階段を駆け上がろうとする
しかし、実はタミフル以外の治療薬を投与した場合でも異常行動の発現報告がありますし、
さらに治療薬を投与していなくても異常行動の発生は認められています。
そして異常行動の発生例によると、
治療薬の服用の有無とは異常行動の間には因果関係はないとされています。
つまり、異常行動は治療薬によって引き起こされるのではなく、
インフルエンザの症状によるものであるという見方が妥当なのです。
治療薬の投与に関係なく異常行動の可能性があるということなので、
子供がインフルエンザにかかった場合、最低でも高熱の状態が続く2日間程は一人にしないで誰かが頻繁に看病したり気にかけてあげるのが重要になります。
解熱剤の服用について
インフルエンザの治療薬は解熱効果はそこまで見込めないので、
高熱が酷くなり、頭痛や筋肉痛などの症状が重くなる場合もあります。
そういう場合、解熱剤は服用するべきでしょうか。
高熱はつらいですが体内ではこれによりウイルスの治療が迅速に進んでいるので、
解熱剤は使わないに越したことはありません。
しかし、症状があまりにひどい場合や睡眠や食欲に支障がでたりする場合、
解熱剤で症状を緩和させる必要があります。
インフルエンザの治療薬と併用しても問題ありません。
ただ、市販の解熱剤にはインフルエンザ中も安全に使えるものがある一方、
インフルエンザ脳症など危険な合併症のリスクを高めるものもあります。
解熱剤を服用する場合はぜひこちらでご確認下さい。
⇒インフルエンザ時に使える解熱剤の種類&危険な市販薬一覧
あとがき
以上、インフルエンザの治療薬の効果や種類の違いについてでした。
種類も少ないですし、違いは分かりやすいので、
それぞれの違いやメリット・デメリットを把握しておくといいでしょう。
ちなみに、インフルエンザにかかった時の対処法についてもまとめているので、
ぜひこちらも合わせてご覧ください。
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《基礎知識》
《予防》
《治療》
- インフルエンザの検査方法
- インフルエンザの際に摂るべき食事・飲み物
- インフルエンザ薬
- 元の生活に戻るまでの期間
- インフルエンザの症状の対処法