木枯らしの意味とは?木枯らし1号の条件(時期・風速)について解説

秋も終わりかけて冬に差し掛かった頃、「木枯らし(こがらし)」や「木枯らし1号」などの言葉を天気予報などでよく耳にするようになるかと思います。

語感のよい言葉ですが、あまり意味をわかっていない人は多いのではないでしょうか?

実は日本の気候においてとある重要な意味を含んだ現象なのです。

今回は木枯らしはどんな現象なのか、どういうメカニズムで起こるのか、どういう意味があるのかなど詳しく解説していきます。

木枯らしとは?

木枯らしを簡単に言うと、『10月中旬から11月末の期間に太平洋側の地域で吹く北からの風』です。

一定の風速以上が観測されればそれを木枯らしと認定し、その年のはじめに吹いた木枯らしが“木枯らし1号”になります。

木枯らしは冬型の気圧配置、“西高東低”になった時吹くため、冬の始まりを表す現象なのです。

木枯らしの条件

もう少し木枯らしの条件について解説します。

木枯らしの条件は『時期』『気圧配置』『風向』『風速』の4つ。ただし木枯らしは関東と近畿地方でのみ発表されるのですが、両者の条件は若干異なります

木枯らしの条件
  1. 期間
    • 関東:10月半ば~11月末まで
    • 近畿:霜降(10月24日ごろ)~冬至(12月22日ごろ) 
  2. 気圧配置:西高東低の冬型の気圧配置
  3. 風向
    • 関東:東京での風向が西北西~北
    • 近畿:北よりの風(西北西から東北東)
  4. 風速:最大風速が、おおむね風力5(風速8m/s)以上

木枯らしはすべての条件で当てはまっている必要があります。

最初に木枯らしが観測された時期から季節が冬めいてくるため、木枯らし1号は日本の天候において重要な意味があるのです。

木枯らし2号、木枯らし3号なども観測されることもありますが、これらはあまり重要ではないので発表されることはありません。

木枯らしのメカニズム

木枯らしのメカニズムを解説する上でポイントとなるのは『西高東低』の気圧配置です。

西高東低は冬ならではの気圧配置であり、西高東低だからこそ北寄りの風が吹くのです。

西高東低とは?

『西高東低』もよく耳にする言葉だと思いますが、これは上図のように日本の北西に高気圧、北東に低気圧が配置されている状態を指します。

高気圧は時計回りに風が吹き出し、低気圧は反時計回りに風が吹き込むので、この気圧配置になると日本では北西~北の方角から風が吹くことになります。

つまり木枯らしとはこの気圧配置が原因で吹く風を指すということです。

日本海側で雨や雪、太平洋側で乾いた風(木枯らし)となる

ユーラシア大陸からの風は日本海側では雨や雪を伴い、太平洋側では乾いた強い風をもたらします。このメカニズムについて見ていきましょう。

ユーラシア大陸からの風ははじめは乾いた風ですが、対馬暖流により水分が供給されて湿った空気になります。

これが日本の山脈にぶつかり上昇気流となり積乱雲が発達。日本海側で大雨・大雪となるのです。

山脈を超えれば水分が放出されているため、太平洋側では乾いた風となって吹きつけます。

この太平洋側で吹き付ける“からっ風”が木枯らしとなるのです。

木枯らしが日本海側では観測されない理由はこのため。

以上が西高東低になると木枯らしが吹くメカニズムです。木枯らし1号とは、西高東低の冬特有の気圧配置になったことを知らしてくれる現象とも言えます。

ちなみにシベリアからの寒気は日本では「冬将軍の到来」とも言われます。

冬将軍の意味や由来とは|冬将軍が到来する時期はいつ?

なぜ冬に西高東低の気圧配置になるのか?

西高東低が原因で日本に木枯らしが吹くというのはわかったかと思います。しかしなぜ冬が近づくと西高東低の気圧配置になるのでしょうか?

高気圧と低気圧にはそれぞれ『シベリア高気圧』『アリューシャン低気圧』という名前があり、毎年冬になるとこれらが日本の東西で発達するメカニズムがあります。

『シベリア高気圧』はシベリアでの気温低下が主な成因。空気は温めると軽くなって上昇気流が生じるのとは逆に、空気は冷えると重くなり気圧が高くなります。この気団はヒマラヤ山脈でせき止められて南部の暖気との交わることがないため、どんどん発達していくのです。

『アリューシャン低気圧』はシベリア高気圧の冷たい空気と太平洋高気圧の温かい湿った空気がぶつかりあうことで発生します。低気圧は冷たい空気と暖かい空気の境目でできるのですが、冬になると日本の北東のアリューシャン列島付近にその境目ができるのです。

木枯らしの由来

なぜ『木枯らし』という名前なのか、この名前の由来について見ていきましょう。

これについては察しがつく人も多いでしょうが、文字通り「木を枯らす」というのが語源です。木枯らしは冬の訪れを象徴する現象ですが、木を枯らしてしまうほど強い風というような意味合い。

実際に冬に落葉樹の葉が枯れる(葉が落ちる)のは冬を乗り越えるために養分を葉っぱから幹に移したり、葉っぱからの水分の蒸発を防いだりするためです。

実際に木枯らしで木が枯れるわけではありません。

あとがき

以上、木枯らしの意味やメカニズムなどについて解説していきました。

木枯らしはいくつかの条件を満たした場合に認定されるものですが、日本の気象現象では似たようなものが他にもあります。

たとえば『春一番』が代表的。

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