「姑息」の正しい意味と誤用について|例文で使い方を解説

「彼は勝ちにこだわるあまり、姑息こそくな方法ばかり使う」

このように『姑息』は「卑怯」というような意味で使われることがありますが、実は誤用です。

最近では間違いやすい日本語としてよく取り上げられるため周知されてきましたが、かつては文化庁の調査で70%もの人が間違えて覚えていたことが判明しました。

今回は『姑息』の意味や正しい使い方に加え、なぜ誤用さているのかなど詳しく解説します。

『姑息』の概要

  • 誤用:ひきょうなさま、正々堂々と取り組まないさま
    • 例文;「姑息な性格をしているから妨害行為を平然と行う」
  • 正しい意味:一時的、その場しのぎ
    • 例文:「失敗を隠すのは姑息な手段に過ぎないので、すぐにバレるものだ」

姑息の本来の意味について

『姑息』の語源

姑息の『姑』は夫の母という意味で「しゅうとめ」と使うことが大半ですが、しばらく」といった使い方をすることもできます。「ひとまず」、「今の所」といった意味です。

そして姑息の『息』は「休むこと」を意味します。

これらの漢字から「ひとまず休む=その場をしのぐ」という意味になるのはわかりやすいですね。漢字だけみると「ひきょう」という意味にはどうしてもなりません。

『姑息』の使い方・例文

本来の意味での姑息の使い方を例文で紹介します。

  • 「波風立てたくない性格なので、姑息な手段ばかりとってしまう」
  • 「割れた液晶は接着剤で止めたけど、姑息でしかない」
  • 「処方したのは姑息な薬剤に過ぎないので、まだ安心はできません」
  • 「壊れたパソコンは姑息的な修理はできますが、長くはもたないでしょう」
  • 「屋外にいる今では姑息的治療しかできない」

誤用では「姑息な人物」というように人を形容する際に使われることもありますが、本来の意味では大抵は“行為”“モノ”に対して使われます。

また「根治治療」に対して一時的な処置として「姑息的治療」、「根治手術」に対して症状の緩和を目的として行われる「姑息手術」などの言葉もあります。

『姑息』を誤用してしまう理由

現在では「卑怯」という意味合いで『姑息』を使うことが多いですが、これはなぜなのでしょうか?

理由としては主に2つ挙げられます。

『姑息』に似た響きの言葉に「卑怯」の類語が多い

卑怯と似たようなニュアンスの言葉として以下の言葉があります。

  • 小癪こしゃく
  • こす
  • 狡猾こうかつ
  • こそこそ

これらの響きが姑息と似ていることから姑息=卑怯というイメージがついたのではないかという説があります。

特に「小癪」を「姑息」と混同する人は多いです。

誤用と本来の意味の区別が付きにくい

「卑怯」と「一時しのぎ」は意味自体は明確に異なります。

しかしどちらもマイナスのニュアンスを含み、使うシチュエーションは似ているため、どちらの意味で使ったのか判別がつかないことが多いのです。

  • 「失敗をごまかすのは姑息な手段だ」
  • 「あの場で責任転嫁するのは姑息だ」

これらの場合、どちらの意味でも通じます。

「一時しのぎの方法」というのは「卑怯な方法」である場合が多いのです。

そのため誤用の方の意味で覚えていてもあまり困らないですし、間違いを指摘される機会が少ないでしょう。

むしろ今では「ひきょう」という意味のほうが浸透しているため、「一時しのぎ」という意味で使うほうが指摘される可能性が高いかもしれません。

それでも正しい日本語を心がけるなら、これを機にしっかり頭に入れておきましょう。